お見積り
当社GCインタビュー記事がDaily Cargoに掲載されました
当社ジェネラル・カウンセル サミュエル・エリック・リーが、海事プレス社Daily Cargoより取材を受け、記事がDaily Cargo 2022年1月11日号に掲載されました。以下より、記事全文をご紹介いたします。
近鉄エクスプレスは今年4月、新たにグループの法務機能強化のため「ジェネラル・カウンセル」(以下、GC)職を設置した。同社では長期ビジョンや中期経営計画に基づき、グローバルでの事業拡大を進める一方、現場主導で事業を拡大してきた経緯などもあり、各地の法的リスクの増大、持続可能性(サステナビリティ)への対応など、各地域・法人では対応困難な課題も生じている。法務機能を強化し、グループとしてコンプライアンス対応を進めることで、安定した事業成長を目指す。GCに就任したサミュエル・エリック・リー氏に、その役割やコンプライアンスの重要性などを聞いた。

ジェネラル・カウンセル
サミュエル・エリック・リー氏
KWEグループは現場主導での事業開拓、営業提案を強みとし、それを原動力として成長を進めてきた。現場で抱える法的リスクについても、個社レベルで弁護士と相談し、対処してきたが、昨今の各国規制法の域外適用の拡大、制裁金の高額化、サプライチェーン全体に渡るコンプライアンスの要請など法的リスクは複雑・多様化、グローバル化しており、個社単独での対応が困難な面も出てきた。
そうした課題は今後さらに増すとの認識から、日本本社のコーポレート部門主導でグループのガバナンス強化に取り組むとともに、ミドルガバナンスとして各地域本部がそれぞれの組織統制を確立する体制作りを進めている。
GCの設置はそうした取り組みを補完するものとなる。潜在的な法的リスクを、コーポレートレベルで適切に把握し対処するため、GCがグループ全体の法務に関する業務、リスク管理統括責任者の補佐業務を独立した観点から助言・指示・調整していく。また、顧問弁護士など外部アドバイザーではなく、社内に専門家とそのチームを設けることで、より強い当事者意識の下、コンプライアンスやガバナンスの面からの経営判断、事業運営を従来以上に促進していくという。
GCには子会社のAPLロジスティクス(APLL)でチーフ・リーガル・オフィサーを務めていたリー氏を登用。APLLでの欧米大手顧客とのやり取りで培った経験なども生かし、グループ全体のリーガル・ガバナンスを強化する。
インタビュー
―これまでの経歴は。
大学院で法律を学んだ後、法律事務所に入り船社や金融機関の案件を担当し、日本企業も担当した。その後、弁護士としてさまざまな案件にて経験を積み、APLから法律顧問としてスカウトされた。米国で、グローバルオペレーションや複雑なクロスボーダー取引での法律上のサポートを行った。その後、多国籍の法律事務所に入所し、企業の戦略的な国際案件を中心に、さまざまな企業の規制や取引に関する問題の担当も行った。
ただ、企業の中に籍を置いて、自分のチームやクライアントを持ちたいという思いが常にあった。そこにKWEのマネジメントとの出会いがあり、彼らやAPL在籍時の同僚であった法務担当者との対話の中で、KWEのブランドやレガシー、チームに感銘を受け、尊敬の念を深めていき、KWEの目標達成のため、そして株主価値の維持・保護のために尽力したいと思い、入社を決意した。これがKWEグループに参加した経緯だ。2019年にAPLLの最高法務責任者としてKWEグループに参加し、このたび2021年4月にKWEグループ初のGCに就任した。
―GCの役割とは何か。一般的なリーガルマネジャーや法律顧問との違いは。
まずGCは資格を持った弁護士であり、専門家だ。その会社の第一の弁護士であり、あらゆる領域の法務業務を担当する。リスクを特定・管理し、会社に助言を与え、強力なガバナンスを追求し、コンプライアンス・プログラムを実施・管理していく。GCは数十年前、大企業の世界各地への進出に伴い、各成長市場において急速に変化する法的規制環境に対応し、様々な事業体、ガバナンス、法的要件を管理しようとしたことから発展した。複雑な環境の変化に対応するためによりビジネスに精通する必要があり、GCの役割も進化していった。
企業は、急速な環境の変化の中でも企業価値や株主価値を守らなければならない。そのため、現代のGCは従来の法律問題を管理する一方で、企業統制の一形態として機能する必要があり、ビジネスに精通した法律顧問として、コーポレート・ガバナンスにおいて中心的な役割を担う。
通常の法務顧問(あるいは社外弁護士)との違いは、彼らが事前に定義づけされた一定の枠内で業務を担うのに対し、GCは、より強い当事者意識を持っており、ビジネスに精通し、内部報告や管理責任を持ち、企業の法律問題全般を担う。GCやそのチームを設置することは社内に法律事務所を置くようなものだ。訴訟、重要なポリシー、ガバナンス要件、また、世界各地での会社のライセンスや契約、知的財産といった業務・ビジネス上の重要な要件を管理する。
―法務の観点で、会社の仕組みやコンセプト作りを担うということだ。では、GCに必要な資質は。
当然だが第一に弁護士の資格があること。だがそれだけでは十分ではない。グループの人間として会社のビジネスや業務を理解し、問題解決能力があることが大事だ。経営陣が解決策を見つけ、意思決定する際に有益で的確なアドバイスを行う必要がある。外部の中立的な立場から“これはダメだ”というだけのアドバイスでは会社にとって真に有益ではなく、良い代替案がないことを認めつつ解決策を探っていく。また、新しいビジネスやサービスを積極的に学ぶ好奇心も重要だ。
―企業がグローバルに事業を展開していく上でのコンプライアンスの重要性について。
コンプライアンスは企業ガバナンスと一体のものであり、持続可能性(サステナビリティ)とも関連する。つまりサステナビリティの追求とは、良いガバナンスを追求するということでもある。経営者が将来の安定成長の道筋を作るためには、強力なコンプライアンスを確保することが大事だ。これらは相互に関連しており、企業価値や株主価値を守ることにもなる。1つのビジネス案件を失うことはコンプライアンス違反によるブランドへのダメージに比べれば些細なコストだ。だからこそ、コンプライアンスの確保には十分な投資が必要になる。当社グループでは長期に渡って企業や株主の価値を維持するために、サステナブルな事業経営を行っていこうとしている。
さらに昨今ではサステナビリティの重要性が増し、企業の戦略的なレベルになっている。当社含め、多くの上場企業にとって、サステナビリティはもはや新しい考え方ではない。企業文化やビジネス慣習の一部として捉えなければならない。今言ったようにサステナビリティの実践にはコンプライアンスの確保が不可欠であり、企業の成長はサステナビリティの追求とコンプライアンスの確保と一体だ。
―GC就任後、現在の優先事項は。
サステナビリティというレンズを通して世界と会社にアプローチしていることを理解すべきであり、サステナビリティを向上させるために継続的に取り組むべきだと考えている。そのためには、ガバナンス、ダイバーシティ、コンプライアンスなど、サステナブルな企業に不可欠なさまざまな要素に取り組む必要がある。
重点的な取り組みの1つとして、独立したコンプライアンス・ホットライン(直接相談窓口)の設置が挙げられる。このホットラインを通じて、従業員が適切な問題提起をしやすい体制を構築する。制度の標準化と従業員への働きかけを強化するために、多言語対応を進める予定だ。また、コンプライアンスに関する研修を実施し、制度や期待されるコンプライアンスについて従業員の理解度の底上げをしていく。ホットラインに報告すべき事柄を適切に理解するには、従業員の知識と理解が特に大事だ。これらの取り組みを通じて、誰もが受け入れやすく、グループの従業員全員にとって有益な環境を整備していく。従業員はコンプライアンス違反に対する最初の防衛線であるから、トレーニングとホットライン制度の構築は並行して取り組みたい。
また、ホットラインを補完するものとして、会社全体の傾向や問題点を把握できるように、分析・報告ツールの導入も計画している。従業員から得られる国別のデータをもとに、コンプライアンスへの取り組みや対応の改善を可能にする。また、データの活用で、コンプライアンスの取り組みを継続的に改善していく。
―ここまでグループ内のガバナンスについて聞いてきたが、顧客にもメリットのある取り組みはあるか。
契約のデジタル化、顧客との契約の簡素化が挙げられる。業務担当者が交渉の履歴や関連文書を確認できる CLM=Contract Lifecycle Management(契約ライフサイクルマネジメント)システムや、データベースの構築を優先的に行っている。弁護士や法律顧問として、顧客とのコミュニケーションの自動化に取り組んできたが、今後も顧客や業務との関わりにおいて、どのように自動化を進めていくかを検討していきたい。また、コーポレート・ガバナンスのためのソフトウェアの導入により、各地域の事業体における要件管理の効率化とデータの見える化、管理タスクの簡素化も期待している。
略歴
Samuel Eric Lee
Education
May 2000 | B.S., The Citadel, The Military College of South Carolina |
---|---|
May 2009 | J.D., The University of South Carolina |
May 2010 | LL.M., Tulane University School of Law |
May 2016 | LL.M., Georgetown University Law Center |
Career
June 2010 – March 2012 | Burr Forman LLP (Shipping, Logistics, and Transportation Attorney) |
---|---|
March 2012 – July 2013 | U.S. Federal Maritime Commission (Counsel to Commissioner) |
August 2013 – August 2015 | APL Limited (Corporate Attorney) |
September 2015 – April 2019 | Holland & Knight (Partner) |
April 2019 – April 2021 | APL Logistics Ltd (CLO/CCO/Group Secretary/SVP) |
April 2021 – Present | KWE Group General Counsel (Responsible for all KWE Legal, Risk, and Compliance Matters) |